君の街まで桜色のバスに乗って〜冬から春へ〜
はじめ
君の街へ白のバスに乗って病院へ行く
君の街は僕の乗っているバスを最後に閉じられる
僕は病状が悪化し 入院することに決まった
喫茶店のバイトも辞めた 詩を書くこともやめたのだ
氷でコーティングされた桜のトンネルを抜ける
雪の降り積もる君の街は死んでいて
僕と同じような境遇の人間が過ごしている
もう永遠に春は来ない
隔絶された君の街で僕は永遠の命を燃やすつもりだ
入院しながら作業所で働く
何の感情も持たない人達と一緒に 動く人形達と働くみたいに
もう何年君の街に住んでいるだろうか
僕は自分の歳を忘れてしまった
繰り返される単調な毎日
君の声と彼女の声が僕の精神を悩まし破壊している
ある夜君は僕の前に現れた
「あなたならきっと私の街を出ても上手くやっていける。生きて」
僕は目を疑った けど笑顔になって言った
「春になったら会える?」
「会える。希望を捨てないで。あなたには大きな未来があるの。私の分まで一生懸命生きたら必ず私に会えるわ」
「約束する?」
僕は涙を拭いた
「約束するわ。あなたと出逢ったいつかのように。さようなら」
「さようなら」
君は静かに背景に溶けるように消えていった
僕の心は晴れ渡り 桜の咲き誇る君の街を離れることになった
始発場からエンジンを勢いよく吹かし膨らんだバスが出る
桜のトンネルを抜けるとき 僕は後ろを降り向いた
君の街から新しい世界へ 桜色のバスに乗って
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君の街まで桜色のバスに乗って