たもつ

家に帰ると門が壊れていた
妻と娘が代わりに立っていた
家の中では妻の短大時代の
同級生だった山本さんがいて
食事の準備をしていた
十年ぶりですね、と言って笑った
煮物の味見をしてあげた
それから娘の連絡帳を確認して
算数の宿題をした
夕食は山本さんと二人で食べた
最後にオレンジをふた切れ食べ
門の役目を交代した
家の中から僕のいない食卓の
笑い声が聞こえてくる
山本さんは昔のように
珍しいウサギの話をしてくれた
髪が風に流れた
その髪に憧れていた時もあった
そう思いたかった
夜はみんな寝た
門の無い家で寝たのは初めてだった



自由詩Copyright たもつ 2007-02-04 20:55:14
notebook Home 戻る