青い貝殻
銀猫

青い月の下で
唇が切れると
錆びた味は生温く
舌先に現実とゆめとの
境目をおしえて
わたしが誰であったか
あなたが誰であったかを
思い出させる


青い月の下で
繰り返されるくちづけは
少しも甘くはなく
むしろ
痛いくらいに
夜を突き付けるものだ

離れて過ごした時間の隙間を
熱情は埋めてくれない

淋しさ、から等距離にいるふたり
しあわせに空腹なふたりは
何かを求めあって
触れ合わずにはいられないのたが
愛は風化を辿りはじめていて
切れた唇から
遅すぎたことばが滲む


背中から伸びる影はますます黒くなり
闇に溶けるばかり
果実の味は
遠ざかるばかり

青い月の下
われらは欠けた貝殻を握りしめる




自由詩 青い貝殻 Copyright 銀猫 2007-02-04 10:24:09
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