君の街まで桜色のバスに乗って〜2004年初夏〜
はじめ

 君が死んでからもう二ヶ月が経つ
 僕は病院に行くために若草色のバスに乗る
 僕は19歳で喫茶店でバイトをしながら詩を書いている
 最近調子がいいんだ
 病院の帰りにメールが来て彼女から会わないかと誘われる
 この街の障害者自立支援施設で知り合ったのだ
 美容室の前で待ち合わせることにする
 空は心の底を突き破るように広がり
 暑さと早生まれの蝉の声がミンミンと震わせている
 君の街は人々で溢れかえっていた
 澄んだ気持ちが人々の隙間を埋める
 いつまで経っても君は来ない
 僕と同じくバスに乗って君の街へやって来るはずなのに
 事故でもあったのかな
 しばらくすると遠くから手を振って笑顔の彼女がやって来た
 僕と彼女は君の街でデートをした

 夕方頃 彼女はホテルに行こうと言ってきた
 彼女とは初めてだった
 部屋の窓から見る君の眠る丘に沈む夕日は神秘的だった
 彼女の方に振り向いた時 彼女はいなかった

 翌朝 テレビで 彼女の乗ったバスが事故に巻き込まれたという
 ニュースを見た
 僕は彼女の町の病院へ行き 集中治療室の様子をガラス越しに見た
 看護婦から意識不明の重体と聞かされた
 僕はガラスに手をつきそのまま崩れていった
 不確かな夏が僕を呼んでいた


自由詩 君の街まで桜色のバスに乗って〜2004年初夏〜 Copyright はじめ 2007-02-04 03:59:34
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君の街まで桜色のバスに乗って