かなしい境遇
九谷夏紀

君は知性と権力を持っていて
だから私は君に惹かれたのかもしれない
実際私は君から知性を吸い取り権力を利用し
君を捨てて君から逃げた
あどけない私自身も置き去りにして

君がお金と美貌を持っていたから
私は君にあこがれたのかもしれない
私は君のお金でたくさんの物や教養を手に入れたし
君の美貌からは優越感と自信をもらった
そして多くの欲深さと妬みの圧迫を受けて
もう正常がよく見えない

君が明朗で世界に疑いを抱かないから
私は君を必要としたのかもしれない
そのひだまりは偽物のようにだけどあたたかかった
ありのままの今を人形のようにだけど一瞬受け入れることができた
けれども明るさとはためらいもせず
尖った刃物のように簡単に私を切り裂けるものだった
疑わないということは私を停止しさせ結局は後退させるものだった

君に才能と若さがあったから
君に希望を見たのかもしれない
その才能に感化されて私は外へ出られるようになった
たくさんの希望をもらったから
たくさんの絶望ももらわなきゃいけなかった
若さとは残酷なものだった
思い出も残らないくらいあっけなく過ぎ去った

いつも
望んで
与えられ
なにかをなくして
終わって
途切れる
積み重ねた信頼が
宙に浮かんで
涙となって
泣いてしまえば
どこかへ流せて
私の気持ちは
どんなものでも
どんなときでも
遠のけられる
私は
いつでもこうして
生きていられる
たくましく
次へ向かう自分が
かなしいくらい
信じられない




自由詩 かなしい境遇 Copyright 九谷夏紀 2007-02-04 00:05:47
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