耳鳴り
サナギ

どうもさっきから耳鳴りがするんだが
耳の中を覗いてみてくれ

おいおい
俺が墓標を背負っている男だからって
こんなもん期待すんなよ例えば

サーカスのブランコ乗りが
星屑の中で行ったり来たり
月明かりのスポットライトが花形の女の子を照らし
くるくるした巻き毛に蝶の髪飾りが光り
白い小さな手が銀のバーを握り
ふっと宙に浮かんだかと思うと
羽が生えたみたいに身体をひねって次のバーに飛び移り
おおう、という観客のどよめき

南の穏やかな海
雲が風に持っていかれてなくなり
空はこれ以上ないってくらいに青く
波間に人影が見えるかと思って目を凝らす
ぴかぴかした鱗が見え
花びらみたいな尾っぽが跳ねて水しぶき
粒の揃ったピンクの真珠みたいな歌声は
人魚

夏の夜
漆黒の空を焦がす
明るい花火
暗い花火
燃える花火
燃え尽きる花火
それらの
闇に散らばり闇の生き物を追う
闇を呼び込み光の生き物を食う
焼け焦げる一瞬の強さ
匂い

淋しく
沈んでいく



そんなもん
期待すんなよ


自由詩 耳鳴り Copyright サナギ 2007-02-03 14:20:12
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