○満月(まるまんげつ)
小池房枝

ここからは見えぬところで太陽がノヴァでもしたのか月が明るい
地上のみならずはるかな高みから真空気圏貫き通して

月影とは月の光のことでした足元に種々ものの輪郭
真空の中には淡く太陽の側へと伸びる地球の月影

ともづなを解いたのは誰悠々と空を一人で渡って行く月
燦々と湯水の如く惜しげなく降り注がれる望なる月光

月光にゲコと鳴くのはナキヤモリ家を守れよ夜を守れよ
月は今頂きに座し全天を光で濯ぐ星と空とを

揺りかごを揺らす手 月はそれぞれの海を満干どちらに操る
照りつけず灼かずに淡く触れていくのみの手のひら月の指先

太郎眠らせ太郎の屋根に降り注ぎ次郎の屋根にも降り注ぐ月
三郎はトイレに起きて外を見てしんと明るい世界に驚け

月に見守られて地中の水たちがそっと凝って背伸びを始める
月に見守られて隈なく見尽くされて清らかな朝になるだろうきっと


短歌 ○満月(まるまんげつ) Copyright 小池房枝 2007-02-02 22:22:06
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