おおきい橋ちいさい橋
yangjah

水の都

おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて


ふたつめの大きな戦争がはじまる前に
船にゆられて日本にやってきた
おばあは
メリヤス工場をさぼるように言われ
大阪の橋の上で
おじいと待ち合わせて
奈良公園で
鹿を見たそうな

日本語のできないおばあと
韓国語のできないおじいは
同じ村の出身
見ぶり手ぶりで生きる


水まとう都

おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて


そして
孫の
わたしは
今も橋を越えつづける

ふたつの言葉を
高い声
低い声
でささやきながら

最後の恋にしよう
最後の人にしよう
あの人が死んだら
わたしはシャーマンになる
と笑う

来世の分まで
恋愛をむさぼらず


水でつながる都

おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて


川をただよう鳥
空を舞う道路
わけへだてなく
子どもの時の眼のまま
みつめるあの人の

その眼が
わたしの中に降りてきて
シャッターを切る

切りとられた風景
留められた時間

おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて



自由詩 おおきい橋ちいさい橋 Copyright yangjah 2007-02-01 02:07:37
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