おおきい橋ちいさい橋
yangjah
水の都
おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて
ふたつめの大きな戦争がはじまる前に
船にゆられて日本にやってきた
おばあは
メリヤス工場をさぼるように言われ
大阪の橋の上で
おじいと待ち合わせて
奈良公園で
鹿を見たそうな
日本語のできないおばあと
韓国語のできないおじいは
同じ村の出身
見ぶり手ぶりで生きる
水まとう都
おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて
そして
孫の
わたしは
今も橋を越えつづける
ふたつの言葉を
高い声
低い声
でささやきながら
最後の恋にしよう
最後の人にしよう
あの人が死んだら
わたしはシャーマンになる
と笑う
来世の分まで
恋愛をむさぼらず
水でつながる都
おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて
川をただよう鳥
空を舞う道路
わけへだてなく
子どもの時の眼のまま
みつめるあの人の
その眼が
わたしの中に降りてきて
シャッターを切る
切りとられた風景
留められた時間
おおきい橋
ちいさい橋
越えて
越えて