■共同作品■ 冬幻郷(とうげんきょう)
Rin K



「雪の音階」


舞う羽の静かな音こぼれるよう
  手のひらの中で羽化した希望(のぞみ)

こんこんとこころに積もる雪の下
  あなたが埋めた種が芽を出す




「冷たさのなかにも」


病室を抜け出した夜の路地裏で
  寒さに蒼くこの瞳(め)を染める

すこしずつ色を失う街並みに
  せめてトーチの光そえよう




「幻夜」


思い出だけ重ね着をして北へ発つ
  白い世界で吾を見つけに

星が消ゆ空も時間も零となり
  また始めから組みなおす自我




「君とあなたの頃」


胸に居る君の笑顔に問いかける
  あの日のように幸せですか


君の夢を凍れる海にも叫んでは
  返らぬ木霊にハンケチをふる


流氷は毎年こうして着くけれど
  おなじ匂いの冬などなくて


あなたですか舞う粉雪の呼び声は
  馴染んだはずの道で迷う夜(よ)




「冬幻郷」


ぬくもりの足跡たどり振り向けば
  不意に胸の奥刺すノスタルジア


頬ぬらすデジャブの雨は紫苑色
  まぼろしのごと冬を霞める





短歌 ■共同作品■ 冬幻郷(とうげんきょう) Copyright Rin K 2007-01-31 23:18:31
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