ゆめ
はらだまさる



森が燃えて
灰になっちまった
空一面に森は舞い上がって
太陽はもう、
随分見ていない
海は汚れて
魚はねじれているし
母さんと妹は
知らない男達に
色んな穴をほじくられて殺された
縛られたままの親父は
拷問を受けながらそれを凝視させられて
すでに白痴だし、

おれ、もうやだ



(きっと)
きっと凄惨な光景が
広がっているはずの浜辺で
膝を抱え込んで、ぼくはひとり鳴いていた
見渡す限りの闇 ――― 世界を美しくするのは闇だ ―――
もう、逃げられるところなんて
この世界のどこにもない


恨みも悲しみも
憎しみも痛みも苦しみも失いそうなほど
疲れ果てて腹が減って
身体を動かす気力もないよ
死んだ方がましだ、
生きてても何もいいことなんてないさ
けれどおれには
死ぬ勇気もないんだ、
ハハ、ハハハ
人間なんて何れ死ぬんだよ、
何もしなくても死ねるんだよ
心配するな、
おれは死ねる
死ねるよ、
神様、


ありがとう


そうだ、
神様、おれのゆめを
聞いておくれよ、


人々が
奪わず、憎まず、
恨まず、争わず、妬まず、
傷つけず、
親しみをもって
教え合い、
尊敬し合い、
愛し合い、
健やかで、
穏やかで充実し、
表現に溢れ、
素直なこころで
いつも世界に感謝し、
精一杯生き、
ぐっすりと眠れる、


そんな風に生きていたいよ
そんな世界で
あって欲しいよ

おれ、
生きるから
がんばって塵を
拾いながら


少しずつ
歩いて


神様、
聞こえますか、






自由詩 ゆめ Copyright はらだまさる 2007-01-31 02:06:08
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