春の陽射し
atsuchan69

白藤の棚にそよぐ 薄紫の風に
邸(やしき)じゅう、色めきたつ菫(すみれ)たち

草葉の緑に、ふるえる白いドレスの君。
房を垂らした大きな帽子から、ほんの少し
零れる笑みと恥じらいを覗かせて
刺繍飾りの胸に たわわな肌の色も眩しく
艶やかな温みを帯びた 命さながら

森から来た知らせは、赤い実の収穫
摘んだ野苺に添えた小さな花
君は、微風にゆれる野山を駆けめぐり
悦びのうたを口ずさむ、雲雀のように鳴く「蕾」

春の陽射しが降りそそぐ古い小屋の窓辺
蕾よ、噤んだ口元の愛らしさ
その無垢なる唇に キッス! 
命よ、どうか終わらないキッスを

熱い吐息を君にあげよう
狼の咆哮にも似た 言葉なき想いを
獣のごとく荒々しい動作で奪う
露わな声、その総て

かよわき枝の芽吹くものたち
春告鳥(うぐいす)の囀りも ふたたび










自由詩 春の陽射し Copyright atsuchan69 2007-01-30 22:58:39
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