眼底検査
曳舟

魚の眼はにこごりの眼である
滓々の溜まり水である
魚の眼はあらゆる向こう岸を
私より先に見に行ったのである

白色の食卓で対峙したそれに
容赦なく朱塗りの箸を突き刺して
ぺろりと平らげた幼い頃の私は
それが魂の一片だということも、
重々承知していて、また

まだ見ぬ反対側の遠い切れ端を
眼球の底にひっそりと隠して
水底に沈む


自由詩 眼底検査 Copyright 曳舟 2007-01-29 19:59:26
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