ハニー。
なを

野良猫を抱くようにして可愛いひとの痩せた腰に触れる
赤茶けた髪はうすめられた不幸と暴力の匂いがする

わたしたちの知る世界の
あまねくすべての場所にたちこめるその匂いを

よく生える蔓草のようにそこやここを這いまわり
わたしがなにによって生えているかわたしじしんが知らない
あたたかいほうへ身を捩らせてぬるい水を惚けたように味わう

生乾きのわたしたちをおりまげたたむように髪と肩と
ゆびと骨とかさねあわせてじっと目を閉じて
濡れた髪が乾くまでのあいだの
所在なさがわたしに与えられるうちでいちばん甘い蜜だ

あなたがわたしを養う蜜ならばいいのに


自由詩 ハニー。 Copyright なを 2003-04-20 23:46:28
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