砂のことば
銀猫


動かない空気のなかで
宛てもなくひらりと
便箋を翻すと
そこには
まだ言葉にならない溜息やのぞみが湧きだして
いつの間にか黒い模様を描きはじめる


遠くへ帰るひとを
いま見送ったばかり
するり、動きだした列車の窓を
無感動に眺めて立ちつくしたばかり

かなしい、と寒い、が
入り交じった風が起きて
わたしは襟を立て
プラットホームの灰色に溶ける

ああ、涙だ
頬を落ちては
まるで海水のように
ひたひたと打ち寄せる

まだ
あなたのために
泣けたのだね

あなたはまだ
わたしの海だったのだね
手向ける言葉は
何が相応しいのだろう


灰色の足もとに砂の感触がする




自由詩 砂のことば Copyright 銀猫 2007-01-28 21:21:29
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