花梨石の標本箱
青色銀河団

(行方不明になる少し前の光景)

そう、いつか南風に
わたしの髪がながされて
地平線の水色に
例えば(紅い花を)
あるいは羊雲の群れに
かすかな共和国のひびきを感じたとき
わたしの名前が呼ばれた





(めざめたときの雪の感触)

夜のわたしは静かです
蛍のように談笑して崩れてゆく
自然のこころが変わってゆくそんな夜です
つめたい雪の感触に
髪だけがめざめています





(かわいそうな雨の日)

果物をたべる音から
幼年時代が分泌されてしまう
ゆっくりはやく回転してゆく
かなたから無限に押し寄せる波紋
不安なんか求めていないのに
かわいそうな雨の日
海岸の羽根のなかで眠る





(糸でんわの作り方)

ずっとあたためてきた
白いかげ
ポケットには感情の木漏れ日
それらはわたしの原石なのです
そっとにぎれば
遠くで窓がひらきます






未詩・独白 花梨石の標本箱 Copyright 青色銀河団 2007-01-28 18:00:05
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