鳥籠に影
し ん


影が動いた
はじめまして、と

永遠に動くはずのなかった影が

信じる心など、とうの昔に捨てきった
祈る心など、とうの昔に燃やし去った
頼る心など、とうの昔に腐敗し消えた
哀しむ心など、とうの昔に拭い去った

影が動いた
何をしているの?

待っているんだよ

影が動いた
じゃあそれまで一緒にあそぼ

影の声の宛てを見上げると
吸い込まれそうなほどに甘く深い
藍のライトブルー
ふいに頬を伝った液体が
唯一の光が降りる冷ややかな土の上に
王冠を創る間もなく零れ染む

影が動いた
泣いているの?

泣いてないよ

哀しむ心など拭い去ったはずなのに
君の瞳は哀しい色
そして僕に暖かさを欲させる

君になら言えるかもしれない
ねぇ、僕をここから出して


自由詩 鳥籠に影 Copyright し ん 2007-01-27 22:48:58
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