世界のはじまり
なかがわひろか

彼は世界を作った

新しい世界を作る前の日に
彼から久しぶりに連絡があった

元気かい

久方振りだね

今度新しい世界を作ろうと思うんだ

そうかい

世界を一日しか知らない彼は
本当はどこかで少し
物足りなかったのかもしれない

あんた、どうする

何が

俺の作る世界に

ああ

生まれるかい

僕は少し考える
世界が終わった日から
僕は相変わらず
のんびりしていた

どうする

そうだな

はっきり言えよ

僕は

ああ

やめとくよ

僕は僕なりの世界を十分に知ったし
それにもう

もう

面倒くさいよ

そうだな

彼は笑う
彼はきっと
初めて
笑った

君は



どんな世界を作るんだい

くだらない

そうだね
君は世界の全てを知っている

ああ

だけど

なんだよ

君は時間だけを知らない

彼は黙った

僕も黙った

しばしの沈黙の後
僕は言う

君の作った世界で
君がまだ知らないことを
しっかりと
見てきてくれよ

僕は言う

彼は何も言わない

僕もまた
何も言わない

沈黙

これで本当のさよならだ

そうだな

元気で

あんたも

それじゃあ

ああ

彼が作った世界は

始まった

(「世界のはじまり」)


自由詩 世界のはじまり Copyright なかがわひろか 2007-01-27 00:40:51
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