言葉
ダーザイン
朝露に濡れた道を
金色に光る
なだらかな稜線へとたどる
うつむいた桜草が
風にふるえ
太古の海を弔ってきた
アンモナイトがひとつ
朝日を受けた岩の間に割れ落ちて
失われた鐘の音が鳴りとよめき
方解石の白が煌めく
丈低い千島笹を踏みしめて
幾つもの藁色の丘を越え
国境稜線へといたる途上
どの丘の上にも
ただ茫洋と
空だけがあった
風に吹かれて所在無く
透き通っていくこのからだ
このこころ
遥かな青みの向こうには
絶対零度の真空が
身投げする者の瞳のように
黒々と見開かれている
何もありはしないのだと
思い決めてなお
紡がずにはおれぬ言葉があった
あなたはと