夜光虫
043BLUE

車窓に映る
男の姿が
昨日よりも
薄くなっていて

山だか、海だか
分からない
暗闇の中の光が

街明かりなのか
船明かりなのか
分からないでいる


夜から朝へ
鈍行列車で走る

名もなき駅で
停車する間

ベロアのシートに
文字を書く
その、ひび割れた
指先に血が滲んでいて

文字よりも
意味ありげに
滲んでいて


窓際に置かれた
HI-Cオレンジの
内側の

その暗闇で
揺れる海原で

そこに僕は
浮かんでいて

うつ伏せに
浮かんでいて

夜光虫が
泳ぐのを
ずっと

眺めている


自由詩 夜光虫 Copyright 043BLUE 2007-01-26 00:36:57
notebook Home 戻る