そして、歩いてゆく
さち



あの日
砂利道で蹴り上げたものは
小石 なんかじゃなくて
はっきりしない哀しさだった

どこかに行けそうな気がするのに
行くべきだと思うのに
どこにも行けない自分だった

何かになろうと思ったのに
何にもなれずに
育ちきらない自分のままで
今も
こうしていることだった

  道端に咲く花が
  やけに一人前に見えた
  少し笑ってみせたのは
  可愛い花だと思ったからなのか
  自嘲的な笑いだったのか
  ただ
  少しだけ呼吸が
  できたみたいで



砂利道は舗装されて
アスファルトになり
蹴り上げた足は
ただ虚しく
ぶつかる相手さえなく
人知れず痛んだのは
したたかに打ったつま先だけ

歩きやすくなったはずだと
誰かが言うけれど
変化しないのっぺらぼうの道は
このままずっと逃げられない
慢性化した哀しみのように見える
転がる小石は無く
揺れる花も無く

  耳の奥には
  一定のノイズが聞こえている
  どうといったほどでもなく
  無視できるほどでもなく

あの日
はっきりしない哀しさ だと
思ったものは
意外に熱を持っていたものだった と
気付く
アスファルトの道を
傍目に順調な足取りで歩いてゆく
蹴散らす小石が無い虚しさが
もっとはっきりしない哀しさを

ノイズの下に こびり付かせる




自由詩 そして、歩いてゆく Copyright さち 2007-01-25 10:08:02
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