Noise
ユキムラ
あたしは、にこにこと笑っている。
いつも、にこにこ。
「エガオ」、と云ふらしい。
何かが違うと思っても、
誰かに酷い事をされても、
決して怒ったり、泣いたり、
感情を昂らせて心を見せたりなんて
そんな莫迦な事、絶対に、しない。
エガオでいさえすれば、誰からも咎められない。
誰かの感情も、逆撫でしない。
だからあたしは、いつもエガオでいなきゃ駄目なんだ。そう思う。
―――時々、自分が途轍もなく汚い存在に思える。
心も、体も、ナニモカモ―――。
グルグルと、頭の中を渦巻きマークが回っている。
あたしの思考を止めようとする。正常な判断が出来なくなる。
誰の言葉も、記号の羅列にしか聞こえない。
―――騒音――雑音――ノイズ―――。
その中で唯一、微かに音が単語を伝えようとする。
あたしは音に集中しようとする。
微かに聞こえる音、単語、
・・・・・・「滅」、「消」、「死」、「汚」、・・・・・・
あたしは其れ以上聞きたくなくて、暗闇に身を寄せて縮こまる。
遠くの方に微かに漏れる、細く、小さな明かりが見える。
あの光は、果たして信じても良いのだろうか。
ホンモノだろうか。
怖くて、
怖くて、
触れる事すら、叶わない。