ちくしょう
水在らあらあ






みなさんどうしてそんな顔してるんですかと
もう猫も言わない
電車はいくつもの死体を引きずって走る
国民みんなにワライダケを月一回配給すればいい
ついでにあんこにくるんで北朝鮮にも送っちまえばいい

妖怪はもういない
西洋から来た悪魔が全部喰っちまった
俺は西洋で妖怪になって
この国で一人ひそひそささやく
大地の歌 森の歌を

みんなの足元は血だらけだ
ただ小さな電話の光で見えないだけだ
夜空には不吉な魔物が飛び交っている
子供たちはできれば友達になりたいとおもう
大人たちはネクタイ締めてふやけた腕で戦ってもいいかと思う
どうせ馬鹿でかい糞をかけられるのが落ちだ

地下街では
雨も日の光も知らない空気が
いくつもの腐りかけた肺を通り抜けて俺に媚びる
でも地下街の壁は涙を
水の流れを知っているから
俺はそっと寄り添って
息を止めて
遠い国の地上を想う
緑の 地上を

JRのホームで
タバコを吸っている若い男にキックする
タバコが悪いんじゃない
お前が悪いんじゃない
ただ
家に帰れ
親のところに帰れ

やさしいひとびとのやさしさが
消えてゆくのが
俺にはつらいんだ
それを何もせずに眺めている
この社会は痴呆性の老人だ
ろくな人生を歩まずに、すっころんで、ぼけた

洋服を着せられた菊人形が
光にもてあそばれている
女に飽きて
アスファルトで自殺する光を吸って
革靴は丸々太る、蛭のようだ
そりゃあ、なあ、水虫の薬も売れるわ

ここは、なんだ、牧場か
ケンタッキーの鶏小屋か
いや、台所さ、みんなゴキブリさ
盲いて、触覚だけうろうろさせて
だから何でも喰うぜ
喰えなくたって喰うぜ
親だって喰うぜ
子だって喰うぜ
先生だって喰うぜ
生徒だって喰うぜ
隣近所のポチだって
タマだって喰うぜ

変わらないのか
変わってないのかなあ俺たちはさあ
久しぶりに会った君はきれいだったよ
そんな君を連れ出せないのが悔しいよ
本当に 悔しいよ

ちくしょう
ちくしょう
そんな君を連れ出せないのが悔しいよ
遠い海にさらってゆけないのが本当に悔しいよ
きれいな君をきれいな海に
連れてゆけないのが本当に悔しいよ

ほんと
よけいなお世話って
なきながら言って
なきながら蹴って
なきながら

切って
切りさいて
そうしたら

ながしながら

帰るから
もう帰るから
そしてもう二度と
戻ってこないから

いつか遠い国で
血から咲いた花を
真っ赤な花を
送るから








自由詩 ちくしょう Copyright 水在らあらあ 2007-01-24 15:15:17
notebook Home 戻る