水辺の騒然
田島オスカー



満月の夜に 半ば無意識に泣いていると
思いのほか疲れる。 昨日の晩も、また。

うす暗い部屋になど居たくもなかったけれど
なにせ この部屋の電球はもう切れてしまったので
卑しくも眩しい月明かりに助けられて
自分の爪先に目をやる 視線がこぼれる

そして、気付けば泣いていたのだった
踏み場など無い部屋に 唯一あった己の爪先の居場所に
おかしいほどに 安心して

安心に涙すると もろくなる。 生き物は、恐らくみんな。
卑しくも満月に照らされて 闇などは、怖くて
そして居場所を 自分を探すのに張りつめて
見つけた安心感に 負けてしまう
そして涙、疲れ。
昨日のあれは夢だったのかしら、とも思ってしまう。



自由詩 水辺の騒然 Copyright 田島オスカー 2004-04-08 20:06:54
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