希望的観測
ねなぎ

観測などしなければ
枯れないだろう

知らなければ日常は
ずっと
そのままでいる

ただ思う事は
ずっと
気がつかないままに
そのままに

そして
僕は電車の中で
気がつかれないように
こっそりと
メールを読むふりをして
写真を撮る

確かに定まりなど
しなければ
変化などしない

どちらにでも
揺れる
不安定な波を思う

どちらとも
言えなければ
その状態は
波でしかない

知らない状態は
波のように
繰返し
メトロノームのように
振れる

そして僕は街中で
振り返らずに
モニターで確認して
背後に向けた
バッグの中の録画ボタンを押す

そのままに
いつまでも
咲き続けるだろう

止まる無く
日常は流れ
続けるだろう

動画が波ならば
写真とは切り取られた波の
一点でしかない

僕の指先が作る書面が
確定していく
情報に寄って
自分の考えなど
入れないように

その一瞬を確定する
そして
その後は発散していく
その後は
知った事では無い

文章も
思考も
切り取られた一部でしかなく
発散していく
書いた一秒後には
別の事を思っている

観測などしなければ
確定などされなかったのに
どうしても
確率を問い質したくなる

告げる事など無ければ
確定される事も無い

影響されない観測者など
居るだろうか

矛盾点を知りながら
展開して逃避している

喫茶店の窓際の席から
外を歩く人々を眺めながら
ゆっくりと煙草を吸い
冷めたコーヒーの波を
持て余している

このままの時間が
そのまま続けば良い事を
願いながら
待っている


自由詩 希望的観測 Copyright ねなぎ 2007-01-23 02:01:26
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