兼業恋人
なかがわひろか

あやおかしな男とはいるもので
月水金になりゃ
どっかに行っちまう野郎がおりまして

火木、土日は
わたしの寝床で
愛を囁くんですが
他日は何処へか行くんですよ

ある日町を歩いておりましたら
あら吃驚
どこかのご婦人と腕を組むあの人の姿
目が合えど知らぬふりをするお人

火曜日に聞いたところ
わたしの愛では
物足りないらしく
他日は彼のご婦人に
愛をお裾分けしてもらっているとのこと

あやあんたはまるで兼業恋人
無駄のない人生を送ってるって

あらあらどうして土日はいるのと聞いたらば
彼の人はどなたかの伴侶
さすがにそれはまずいからと
なるほどなるほどど
合点が行ったという訳です

しかしまあわっちにはお前だけと
そんな風に言われますと

世辞に弱いわたしは
それはそれでよろしいかと
思ってしまうのでありました

(「兼業恋人」)


自由詩 兼業恋人 Copyright なかがわひろか 2007-01-23 00:51:29
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