猫は死なない
画竜点睛

彼はミケ
此処にやってきて
まだ半月足らず


彼はいつも言う

”この町は暮らしやすい”
昨日はこんなことを言っていた

”この町は飯がとても美味いんだ。
 あの町のは食えたもんじゃない”


来たばかりの頃はこんなことも言っていた

”あの町にいた頃よりも体がとても軽いんだ”

そうして飛んだり跳ねたりしてみせた


私はいつもこう答える

『私もそう思うよ』


そして彼は最後に必ず言う

”そういえば此処へはどうやって来たんだろう”


彼は此処がどこなのか知らない


彼は言った

”目が覚めたら着いていた”

当たり前のことなんだけど
彼は知らない


だから私は教えてあげた

『みんなそうして此処に来るんだよ』


彼は此処が何かを知らない

だから彼はまだ生きている

私は此処がどこで何なのか知っている

だから私は死んでいる


知らないから死なない
知っているから死んでいる

私は猫である彼が
少し羨ましかった


猫は死なないのだから


私も知らなければ良かった








前編:猫の一生
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自由詩 猫は死なない Copyright 画竜点睛 2007-01-22 23:28:47
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