輪廻
未有花

真夜中の鳥が鳴く薄汚れた館で
誰かが歌を歌っている
それは私をいざなうような
甘く悲しい声

その声に導かれるまま扉を開くと
どこまでも深い青が広がっていた
闇夜は海のように密やかに
私をやさしく抱き締める

その寡黙な闇の愛撫に
心をおののかせていると
声はさらに魅惑的になり
古ぼけた懐かしいメロディを繰り返す

ーー私は一刻も早く行きたかった

闇の誘惑を振り払って
軋む階段を上り詰めると
はずれた扉の奥から聞こえて来る
懐かしいそしてまだ見ぬ声

ああ私を待っていてくれたのだ
手を差し伸べるとそこには
歪んだ顔のビスクドール

もう何年前になるだろうか
私はこうしておまえに会いに来た
割れた鏡の奥で誰かが笑う
そうあれは私が殺した妹!




自由詩 輪廻 Copyright 未有花 2007-01-22 12:15:24
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夜の童話