輪廻
未有花
真夜中の鳥が鳴く薄汚れた館で
誰かが歌を歌っている
それは私を誘うような
甘く悲しい声
その声に導かれるまま扉を開くと
どこまでも深い青が広がっていた
闇夜は海のように密やかに
私をやさしく抱き締める
その寡黙な闇の愛撫に
心をおののかせていると
声はさらに魅惑的になり
古ぼけた懐かしいメロディを繰り返す
ーー私は一刻も早く行きたかった
闇の誘惑を振り払って
軋む階段を上り詰めると
はずれた扉の奥から聞こえて来る
懐かしいそしてまだ見ぬ声
ああ私を待っていてくれたのだ
手を差し伸べるとそこには
歪んだ顔のビスクドール
もう何年前になるだろうか
私はこうしておまえに会いに来た
割れた鏡の奥で誰かが笑う
そうあれは私が殺した妹!
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夜の童話