踊るとすれば輪舞、できれば砂漠の真ん中で
たりぽん(大理 奔)

呆然としているだけで流れていくものを時と呼ぶな。わたしたちの
いちばん大きな乗り物は、生まれてきたときの速度を保とうとして
いるだけで、あなたの生き方とは関係がない。冒険せよ勇気を持っ
て自らの時を刻むときだ。

  言葉はことばに過ぎない
  岩に刻んでも
  紙に書き殴っても
  海にちぎり捨るとしても
  誰かに届かないなら
  どんなに優れた言葉も
  それは砂漠に落ちた
  一滴の水のつくる染みにも及ばない
  ひとの心の仄かな熱が変化する
  不器用な糸を紡げ

ピリオドの打ちかたばかり気にするな。ほんとうは物語をはじめる
ことの方がとても大切で、それは生まれたことも忘れて死んでいく
いのちをつなげていく大切な冒険を捨てたかなしい輪舞のかたち。

  美しいものばかりでも
  汚いものばかりでもない世界を
  数学のように俯瞰し
  科学のように妄想し
  恋愛のように苦しみ
  言葉で曖昧にせよ

不完全ゆえのあやうさを、消えそうだからこそたいせつな炎を、冒
険せよ。かなしみをかなしみとして背負い、あやふやな言葉を不器
用に紡ぎ、境界という境界をかき消して。

  わたしが私にすぎないように
  あなたは貴女にすぎない
  すれちがった時間を懐かしむのは
  とても残酷な刃物のようで
  砂漠に落とした
  ひとしずくを
  ただの染みであったと

  私だけは思うな!




自由詩 踊るとすれば輪舞、できれば砂漠の真ん中で Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-01-22 01:26:06
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