決意
yoshi
目の前に並べられた
あたしと彼の渋い色のマグに
焼酎がなみなみと注がれていて
お酒のあまり強くないあたしは
今日の酒宴の成り行きを
密かに覚悟をする
飲めないくせに
「同じものを」って
注文したかったから
彼はいつものように
箸をあちらこちらへ動かしながら
なにやら仕事の事を
熱心に話している
隣の席ではサラリーマンが
管を巻いていて
それを見ながら時おり眉をしかめた
そしてそんな気持ちを
共有したかったから
あたしも眉をしかめてみた
お互いにしかめっ面で眼があって
少し笑った
あたしは彼を
ずいぶんと長い間知っているのに
知らないことが多い事に
毎回驚く
そして嬉しくなる
少しづつでもいいから
彼を知りたい
少しづつでもいいから
彼に近づきたい
そう思って
今日も居酒屋の暖簾をくぐったのだった
彼は大抵帰り際にこう言う
「いつもごめんな」か
「次、どうする?」か
今日は決意の日だ
あたしは強くなるって決めたんだ
お酒のせいで
少しクラクラしてるけど
飲めない焼酎ロックで飲んじゃってるから
呂律が回るか自信ないけど
今日はあたしから言うんだ
「次、どうする?」