かしらもじ
なかがわひろか

   

   【ア段】



愛していると仰るの
買われましたと言い返す
去り行く今夜違う背中
たちんぼの我を見つめよ
泣き言啼き声なんでも出せる
はめられるのかはめるのか
満足すればそれでよし
やられるばかりの夢幻想
裸婦の正体誰ぞ知る
我のみが知る其方の腹中



   【イ段】



生き死にに戯れる
規律に縛られる起立礼
娑婆の世界で己の愚行
血の日はおあずけ
にんじん色したハートマーク
百八つの鐘を鳴らして
ミカン畑で踊る小人
いい加減な指使い
理解不能?それもいい
生き死にそれだけが全て



   【ウ段】



うがい薬で目を洗え
屈服する姿それもよし
巣窟の中で見たものは
爪を噛んだあんたの娘
濡れた頬濡れた股
踏み散らかしたあんたの欲
無邪気という尖る武器
緩めるベルト晒すモノ
瑠璃色?そんなきれいなもんじゃない
嬉し泣きまあそれもいいさ



   【エ段】



抉る指
毛が絡む
切ないよがり
手を伸ばし
ねんごろの果て
変態窒息
目隠し鬼さん恥辱に舞う
鉛筆の芯
憐憫の花を描く
絵描きの痴態



   【オ段】



雄雌醜い性と生
子を身篭ったが最後
外面だけの対面
鳥が運んできたただのモノ
呑気な泣き声
炎の中に突き落とす
もらい泣き
よがるお前
狼狽する親
をかしをかしと嘲笑せん



(「かしらもじ」)







自由詩 かしらもじ Copyright なかがわひろか 2007-01-21 02:41:15
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