クロスロード
恋月 ぴの

お昼時しか食べられない
よし牛の牛丼
なんだか
味が変わったような気がする
不思議だよね
東京タワーは郵便ポストより真っ赤だし
飯倉の交差点には
いつも機動隊の車両がとまっている
交差点の向かいがわに立つ
水羊羹のような建物
あれってなんだっけ
思い出そうとしても思い出せない
と言うか
思い出しても無駄なことって多すぎる
ハンカチを贈るのは別れのしるし
緑色のインクで書いたのは
さよならの手紙
黄色いハンカチと
青いハンカチ
汗臭い青春のひとコマをぬぐったのは
どっちの色だっけ
繰返すようで
まったくおんなじなようで
似ても似つかないもの
パンタロンとブーツカット
昨夜のあなたと今朝のあなた
階段を昇る
ローライズからちらっと見えるパンツには
やっぱし目を背けてしまう
見ざる聞かざる言わざるってことで
きょろきょろしてはいけないよ
累々と横たわる罪深きものたちの死骸を跨ぎ
よし牛の牛丼は
毎日午前十一時からの味


自由詩 クロスロード Copyright 恋月 ぴの 2007-01-20 22:53:24
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