その日、屋上の扉があいていたんだ
たりぽん(大理 奔)

手すりのない屋上で
そらをとりもどす、わたしがいる
限界線ちへいに浮かぶ遠い筋雲の
気流の音に耳をすます
わたしがいる
まぶたの裏に
真昼の月を新月と焼き付け
まぼろしではない見えないものに
そらをとりもどす、わたしがいる
ふいに街の猛禽が
ビル風を上昇気流と叫び
びゅうと、そらをとりもどす
わたしがいる

   誰にも、言葉を預けたくない
   つたえたい胸の温度の
   灼ける音に耳をすます

頬がつめたい、ゆびさき
まぶたの裏に
真昼の君をほんとうと焼き付け
とどかない、いとしいものに
そらをとりもどす、わたしが

なくしていく
なくしていく
ビル風を上昇気流と
猛禽の背中に
びゅうと、そらの
かわりに失っていく
ゆびさきからそらへ

そらを、とりもどす
わたしが




自由詩 その日、屋上の扉があいていたんだ Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-01-18 23:54:37
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