堀川
水町綜助

僕が川面に平坦な表情を映して

都会の水は緑色してて、細かい、本当に細かい小さなたくさんの滓を

とかしこんで

混ぜ込んで

漂わせて

気が向いたらめちゃくちゃに掻き回しているんだな

なんて思っているとき

君はどっかのいなかの

畑の近くの

軽トラックの荷台の上で

サンバートラックとかいうんだろうあれは

そこに幼い体で乗っかって

突っ立って

青空が夏の山なみに切り取られて

つよい風が吹いてて

草むらが激しく揺れてる

君をもやしてるみたいだ

君は笑顔だ

停止した笑顔だ

そりゃそうだ

これは写真なんだから

君が昨日の晩に見せてくれた写真だ

時計とか言う道具を使って言えば

もうずっとずっとむかしの一葉

父がまだ普通だった頃のわたし

はは笑ってるけど歯が抜けてるね

私の顔も、表情もあかるいよね

そうだね


何気なくシャッターが切られたときから

すべてが木っ端微塵に整合性を失いだして

ひとの輪郭は

山々の稜線は

ほどけ

それではみ出した色は

色として独立してあたりを重なり合って塗りこめた

その沼に僕達をかたどっていた線はずぶずぶと沈みこみ

色は氾濫し

やがて黒一色になったかと思えば唐突に朝が

また辺りを鋭利な刃物で切り刻んでバラバラにする

すべて切り落とされた後には

藁半紙が一枚あってそこに

色を失った僕達が線描で干上がる

僕がそれを望んだか

君がそれを望んだか

僕がなにかしたか

君は冤罪を贖罪しなきゃいけないのか

その罪に罪人はいるのか

見当たらない

罪ですらない

水の中の細かい滓の漂うこと


僕は川面を覗き込み

都会の川は僕と町をみどりの水にそっくりそのまま映していた

ゆらめくが

翻弄など僕はされない






自由詩 堀川 Copyright 水町綜助 2007-01-18 23:28:41
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