しっぽを掴む
士狼(銀)

あと二回満月に逢えば
わたし、ひとりと眠る

僅かに欠けた月を眺め
煩雑な世界に目を瞑り
生きて死ぬことだけを考えた
それからカァテンレェスを畳んで
大洋に堕ちる一滴の雨粒のように
短く、儚く、静かな遠吠えをした
夢は暗く重い空から
木霊のように囁いた
まだ見ぬ夢の声に
失明に怯える左目が震えた
わたしの半分は
ちゃんと動物だった
少しだけ
夜が軽くなった

夢のしっぽから
ちょっとだけ拝借して
髪の毛に紫を織り込んだ
その鋭い牙に触れるまで
わたしの首輪は外さない

掴んだ手を宥めるように
しっぽはとても柔らかい


自由詩 しっぽを掴む Copyright 士狼(銀) 2007-01-17 22:28:29
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