真夜中の刺繍
ロリータ℃。



『ねえ』

世の中矛盾だらけだよって
背伸びのつもりで言ってみた


『歌姫』

ららら
ずっと歌うよ
そのぼやけた孤独にある
君の輪郭を撫でるため


『灰色』

空が重く垂れていたので
ふと手を伸ばした瞬間に
それは甘い中間色になりました
あなたの慈しみに似ていると
思った私をどうかお許しください神様


『ふわり』

頬に優しく触れた指は
まさしくその擬音がぴったりでした
熱いお湯を冷ますように
そのまま息をふきかけて
熱い体をさらに
燃やして欲しいと思ったのです


『ベビードール』

脱がされるためだけに存在しているような
そんな錯覚すら抱きます
黒い裾からこぼれる太腿は
自分でさえ淫靡に思える
是は喪服と同じ意味合い
私たちは互いを殺しあうように
牙を磨く
気づかれないためならば
気づかない振りも厭わない


『声』

日に何度かその声を思い出します
すこしおぼろげですが
そうでもしないと忘れてゆきそうで怖いのです
怖いものがなくなることも怖いですし
何よりその声が
私の体を震わせるだけで私は多分幸福なのです


『祝福』

どうぞ静かにしてみてね
白いスカートが靡いてるんだ
赤いおめめは夢をみるんだ
モーツァルトを聞きながら
草原を思い浮かべる日曜の午後


『けれどね』

此れしきの事で
私が傷ついたとは思わないで
貴方ごときの棘が、私を涸らせる筈も無い


『あなた』

そこにこころがあっても
魂がないことに最近気づいた


『ごめんなさい』

どうしてだろうね
寄り添うことは出来たのに
私たちいつも、間違えちゃうね
勝ち負けにこだわるのナシにしよって決めたのに
売れ残りの花火だって
二人きりなら幸せだったのにね


『女の子』

期待したってあげられないよ
わたしはアンテナを売るひとだから

「こころはいらない」

長い茶色の髪をみつあみにして
白い服の少女は歌った







自由詩 真夜中の刺繍 Copyright ロリータ℃。 2007-01-17 03:08:40
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