風が唄っていた
ダーザイン

使っていない電話器が時々鳴る
コードは何処にも差してない
その受話器が持っていた番号は
もう何処にもないんだよ
遠い昔つながっていた
あなたの電話番号も
もう何処にもないんだよ

あなたが消えた夜の果てにも
光の粒子が寄り集い 今は
幾つもの明かりが灯っている
銀の砂粒
金の砂
青い炎の衣をまとった
星の子供ら

こんな夜にはベッドを抜け出し
コートのポッケにウイスキー入れて
丘の上まで行ってみようか
とっても寒い夜だから
コートの襟立てマフラー巻いて
冬枯れの野を
ゆっくり ゆっくり歩いていこう

空っぽの電話が再び鳴る
受話器を取ると
どこか遠い所で
風が吹いている
目を閉じると
果たされることのなかった
約束の花束が
風に舞い散り
宙空に
色とりどりの星座を灯す

 いつもお電話ありがとう
 天気輪の丘へ行く道は 今夜も
 星屑でぎっしりだよ
 青く光る道をたどって
 丘の頂きに立てば
 僕はもう
 ここにいるのか
 そこにいるのか
 わからなくなってしまいそうだよ

受話器は何も答えなかった ただ
どこか遠い所で
風が唄っていた


自由詩 風が唄っていた Copyright ダーザイン 2004-04-07 15:04:04縦
notebook Home 戻る