お題/愛をしてみる
茜井ことは



忘れないでいようよ
片目をつぶった偽善の素晴らしさ
ひとつだけ飛び抜けて長い小指の爪が
あなたの肌に食い込まないように
小指を丸めてあの手の平を握った


もう夜のことを
やわらかいベットに結び付けて
甘えようとするのはいやなんだ
終わりのこない昨日の墓場は
紛れもなく、この陽の当たらない時間で


拒絶はしないの
悲しいことも暗いことも全部
そろそろ薄日が差してきた
だけどほら、ひと粒の幸せくらいなら
いつだってここに転がっている


あなたの髪をすくう
どんな絵画の中よりも眩しく肌寒い
1月の真昼の中で






自由詩 お題/愛をしてみる Copyright 茜井ことは 2007-01-15 22:21:53
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