メルヒェン
鏡文字

遠い国で鳥があの娘を
拾って育てる
鳥はあの娘に名前をつける
あの娘は鳥に名前をつけることを考えている

鳥はあの娘に
おいしいお粥を作らせる
あの娘は庭のいちじくを
鳥にもいで来させる

森に夜がやってきて
梟がミサの時刻を告知する
あの娘は箒にまたがって
鳥を恐る恐る笑わせる

きのこを見つけて
樹液を探って
魚を捕らえて
二人はそれらを分けあって食べる

遠い国で鳥があの娘に
名前を付ける
あの娘は鳥に相応しい名前を見つけられないまま
幼くして死んでしまう

鳥は死ぬまで
あの娘の名前を呼び続けた
僕らの国の言葉では
表記できない発音で


自由詩 メルヒェン Copyright 鏡文字 2004-04-07 01:19:00
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