常勝することよりも上昇したかった
ぽえむ君

彼は
勝つためだけに生まれ
勝つことだけしか許されなかった

勝つ論理しか与えられなかった彼にとって
勝ちとは
強いとは
定義や疑問をもつことすら許されなかった
彼は
勝ち続けることだけが
生き続けることでしかなかった

ただ
彼は勝つことの切なさと悲しさだけは
感じとっていた
勝つ前に多くの期待があったとしても
勝った後では
達成感や克服感よりも
安堵感の方が先にあった

彼の周りの人たちも
彼は勝つ人であると
勝ち続ける人であると
信じているというよりも
常識に近かった
彼は決して裏切らなかった
彼はその度に辛かった

唯一
彼の夢は上昇することだった
上昇とは
定義や疑問を考える必要はなかった
常勝する世界から抜け出す上昇が欲しかった

彼はいつも切ない瞳で上を見つめていた
それでも他の人には
彼は上ではなく
前を見ているのだとしか映らなかった


自由詩 常勝することよりも上昇したかった Copyright ぽえむ君 2007-01-14 07:11:00
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