投函
tonpekep
さようなら
冬の中では決心も幾分
凛としている
さようならを投函しようと思うのでした
さようならを投函しようと思うのでしたが
ポストの投函口は
市の条例とかで封鎖されてしまい
更には全てのポストの側に
防衛省の自衛隊員が配置され
いつでも臨戦態勢になっておりました
仕方なく隣りの市役所に出掛けるのですが
隣りの市役所は市役所で
さようならは全く取り扱っていないということで
役所を出ますと
今年初めての紙吹雪が降り出しておりました
沿道にはたくさんの何かしらの卒業生が待ちかまえて
おめでとう
おめでとうと
窓ガラスを壊しながら
祝福してくれるのでした
わたしはさようならを握りしめながら
少し景気の良くなったような気もする
手入れの行き届いた
けれどもいたずらなのかうらみ節なのか
詮索はあまりしたくはないけれど
10円傷で丁寧に彫られた
葵の御紋の印籠の
描かれたタクシーを止め
「さようならを投函できるポストまで」と
そう告げたなら
「ひかえおろう」
慌ててその場にひかえたのですが
タクシーの運転手さんは
ごそごそとポケットから10円玉を取り出し
投げつけたかと思うと
チキチキマシーンのように
今年の恵方に去ってゆくのでした
乗車拒否をされたのか
されなかったのか
そこのところが微妙にあやふやではあったけれど
去っていくタクシーに手を振りながら
ご老公様と叫ぶ
ばらまかれた10円玉の辺りから
たくさんの蕾が一斉に花を開けば
花はとても美しい声でいつまでも
猫ひろしを
歌い続けているのでした
それは何だか無性に人恋しくなってしまいそうなリズムで
行き来る人に
「今からホテルで気持ちいいさようならしませんか」と
口説いてみるのですが
忙しそうに手を振るばかりで
「貴様だってニュータイプだろうに」
とアムロ・レイのような大人げないことを
呟いてしまうのでした
どのみちさようならを
投函などするはずもないことを
百も承知でこんな詩を書いているのです
近くのブックオフで
DVDを買ったら
福引き券を引かせてもらえた
赤色がでたのでちょっとドキドキしたけれど
4等であることを告げられた
ミニサイズのポテトチップスか
バーベQー味か
或いはかっぱえびせんを選択できた
ポテトチップスにした
ありがとうございました
と言われた