さくら
恋月 ぴの
それって秘密だよ
思わせぶりに微笑んだ
あなた
ドラえもんじゃないくせに
ポケットから何やら取り出しては
桜の木に振りまきはじめ
(まだまだ寒いよと眠ったままなのに
まだかまだかと貧乏揺すりしてる
そうだよね
「明日から」を繰り返してるうちは
何も変わらないのかな
そんな桜の木は夢を見ている
大きく広げた腕のなかで
繰り広げられる
楽しそうな笑い声と
彩りも鮮やかな宴の賑わい
やっぱり
あなたのこと
もっと知りたいけど
知らないほうが幸せなのかな
よく考えてみれば
あなたのことを知らなすぎるのに
いつでもわたしの傍には
あなたの姿
春を待つ長い眠りに飽きたのか
あたりの様子でも窺うかのように
小さな蕾がぷくっと動いた