魂を研ぐ者
なかがわひろか

夜、冬空の下に魂は凍る
武器を持たない戦士は
凍りついた魂を削り
剣を作る

悪魔の肉を切り裂いて
真っ黒な血が夜を濃くする
凍りついた魂は
月に照らされ
黒々と輝く

繊細な魂も
穢れきった魂も
戦士の手にかかれば
皆同じ
切れ味のいい
剣に変わる

魂の元の居場所は
最早当の昔に
腐り崩れ落ちた

今頃土の中に潜む
虫たちに
食い尽くされて
いることだろう

戦士には
そんなことは
関係ない

凍りついた魂は
月が照らす夜に
悪魔の血に
真っ黒に染まる

武器を持たない戦士は
今夜もどこかで
凍りついた魂を
研いでいる

(「魂を研ぐ者」)



自由詩 魂を研ぐ者 Copyright なかがわひろか 2007-01-11 23:15:02
notebook Home