【断れない人】
つむじまがり

『断れない人』はきつねうどんが大好きでした。
開店早々の立ち食いそば屋に入ろうとしたある寒い朝、
「おはよう 『断れない人』!今日は寒いからタクシーで一緒に行こう」
するとそば屋など無かったかのように
「そうですね そうですね タクシーで行きましょう」
そうですね 会社に着く前から仕事は始っているのでした。
忘れてました。

それでも昼は自分の時間
立ち食いそば屋へ行く途中、一人で歩く女子社員。
「今日はリョウコが休みなの 『断れない人』さんはどこいくの?」
すると、誘導尋問に敢えて乗りつつ
「ん・パスタかな?」
そうです お昼はパスタとコーヒーそして
楽しいおしゃべりの為にあるのでした。
忘れてました。

残業も断れない『断れない人』は断れない仕事をしながら、
「今日は遅くなりそうだから今のうちにきつねうどんでも…」
と そこへ
「はい 差し入れ」
『断れない人』は早撃ちガンマンより早く満面の笑みを繰り出し
「マックって時々無性に食べたくなるんですよね。」
そうそう 残業と言えばハンバーガーでした。
忘れてました。

ようやく着いた地元駅 ほっと一息
するとそこへ
いつかの残酷な少女がやってきて
「あれ また会いましたね。」
そして『断れない人』の顔を下から覗き込みながらこう言いました。
「一緒におうどん食べません?」

こうして
『断れない人』は『断らない人』になりましたとさ。

おしまい


自由詩 【断れない人】 Copyright つむじまがり 2007-01-11 22:12:51
notebook Home 戻る  過去 未来