昼の月
あおば
春の朝も
冬の夜も
代わり番この
月がでる
びしょびしょに縛られて
かちんかちんに凍り付いた
寒い夜
堅い手足を
揉み解す時
回転体の約束を反故にした空の誓い
生まれ初めの空虚な空色が
生まれ初めの空色の電車を走らせる
空の堅さをあざ笑う少年の目の虚光
落ちて形骸化された天体の屈辱
ブルートの瞋恚の炎を内蔵する
円形の館に反逆者を幽閉し
外耳道蓋然性の感官に囲繞する
伽藍の静けさ観世音菩薩の嚔
氾濫する外観
囲繞する観念
見たことのないコビト達の行列
春も昼も
月のない空に
統合された意識と無意識のカタチは
白い稲妻の束の間の微笑みに似た
リストラされて居なくなった村人達の
望郷の文字が自然薯を甘くして
粘っこい性格を売り物にして
買い物帰りの衝動的な生き物
普段着お化けが傘を差して森へ向かう
ホー法華経と有り難い経を読む鳥の
可愛らしい囀りを録画する自然の営みが
腹が立つほど悔しくて
佐々木小次郎のような刀を背負い
ツバメ返しのような太刀さばき
大空を一刀両断にする
見てきたような鎌鼬の切断癖を
強制する反面教師の美しい手足を
切断したつもりの気の短い観念
外観
概観
震えるような味覚
鰺の干物を囓る
教養のない猫の
鎌鼬に似た後ろ姿
虹色の眼
燃え尽きた
情熱と
文明国の矜持
泰山木の陰で
筵旗を誂える
概観
と
外観
が
だいじに育てた
クローン羊を
切り刻んで調味料
嚔の出るような
刺激臭のある
深海の大鮫を捕らえたの
収穫あったと
報告書を待ちわびる
侘びしいカミキリムシたちの
だいすきな
しろい
半片
が
空に浮かんでいる
よく晴れた春の日の朝に
無色透明な寝惚け眼で見る
しらとした
月骸
しらばくれるを
詩ラッパ暮れると変換する
ワープロの人工知能に魂消た
無反省なカミキリムシたちの
大好きな白いはんぺん
湯気のでるお吸い物
無色透明な寝惚け眼に映る
昼の月が
欠伸する