遠い別れ
銀猫

北からの強い風が吹いていた
枯葉をまだ護っている木々にも
誰もいないベンチにも
そこに流れる時間さえ吹き飛ばし
風は強かった

明け方の夢に両の頬が濡れて
世界中で独りぼっちのような目覚めを
不思議と静かに迎えた朝

 (きっと今日はきみが逝った日)

漠然とそんなことを感じた

人生だとか
そんな大げさな物語でなく
けれど
多くの日々を分け合ったきみに
思いを託したことを
ただ愛情と呼ぶには切ない

 (戻らない)

風が吹きつける
すっかり冷たくなったこころにも
まだ風が吹きつける

暦に何の記しもなく
ただ寒いばかりの冬の日
そんな日だったと
いつか人づてに聞いたのだっけ
悲しみと呼ぶには何処か異次元のようで

わたし、
泣けない




自由詩 遠い別れ Copyright 銀猫 2007-01-08 19:17:34
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