蝶変化
きりえしふみ

あの小さな恋が終わって
零したのは少なからずの涙
残ったのは心地よい 何処かしら懐かしい 小さな切なさでした
けれど この大きな恋が終わって
零したのは数え切れない笑い
私がせっせと私の中で育んだ 女の煌めき
……七色の花びらのような キラキラとした優しげな眼差し
私が毎朝水をやり 世話をした その微笑を
私は一度の恋ですっかり落としてしまいました
……それは まるで 花びらを落とした淋しい植物のようです
日はもう西方へ沈みました
太陽だったあの人も すっかり遠くへ過ぎ去りました
後はか細い茎のような青白い身体が残るだけです

私はこの先この身を何処へ植えるのでしょうか
また他の太陽を見つけるのでしょうか
それとも 気まぐれなあの太陽が再び巡るのを待つのでしょうか

それとも このまま根無し草や徒花のように
風の誘いに乗っかって 色々の昼、色々の夜の扉を叩くのでしょうか
……閉ざされたあなたの部屋の代わりに

ひらひら チョウチョのように行くのでしょうね
訪ねるのでしょう 私は
私の種を種のままに
もう自ら 咲き出すあの綺麗な花には
幸せな花には なろうとはしないでしょう
首を切られたように 残った花茎が 萎れた何枚かの葉が
余りに悲しく痛々しげに 私の目には映るのですから
私は花園と春を訪ねる風の手を取り 選ぶでしょう
息絶えるまで 流離い人になるでしょう
チョウチョのように ひらひら行くのでしょう

(c)shifumi_kirye 2007/01/06


自由詩 蝶変化 Copyright きりえしふみ 2007-01-08 16:03:47
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