夢の記述
カンチェルスキス





 僕らはいつから座っていたのだろう
 小高い丘の公園の白い階段には
 砂が混じっていて
 何かしゃべってるときでさえ
 いつも居心地の悪い摩擦を感じていた
 時間が透けて見えてくるような冬の日差しが背中にあって
 足元の自分たちの影の濃淡を気にしながら
 僕らは春を待っていた





 僕らの住む街には倉庫がなかった
 街に溢れるのは一日限りの物質だけだった
 振動するだけの尽きない採掘の音楽は僕らの聴覚を奪った
 見えない銃弾が飛び交い僕らの胸や背中に小さな穴を開けて
 そこから砂のようなガラスが漏れて僕らの体はだんだんしぼんでいった
 砂のガラスをかき集めると記念品のようになったから
 僕らは夢中になって求めるようになり
 きらきら光ったり触った指先が切れて自分の血が赤なのがよけいに面白おかしくて
 助け合ってようやく生きられる者同士だったけど
 僕らは人間らしい態度でおたがいを撃ちまくった
 自分たちでさえどこで手に入れたのかわからない銃で





 影のできないこどもが水道の蛇口をひねり喉を潤した
 ぬぐった口元が幻のように輝いて
 滑り台の反射もベンチの影も光に包まれた

 



 僕らは夢を見ていたわけじゃないただ座っていた
 にこにこ上機嫌で
 けれど隙間を埋める言葉や沈黙はすべて夢の記述だった
 僕らは夢を見ていたことに気づかなかった
 小高い丘の公園の白い階段の砂に
 まるでカーテンを開けた後のような劇で
 ガラスの砂が積もり
 きらきら光って透明も結晶の血の赤もきれい
 先のまるくなった風で整列すると
 僕らは紛れもない量だった
 ここには僕らしかいなかった僕らとその他のものを区別してしまった僕ら
 僕ら重なり合い
 命の経験などなかったような顔をして
 待ち望んだ春を迎えていた

 






自由詩 夢の記述 Copyright カンチェルスキス 2004-04-05 16:37:26
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