虚無をめぐる予測
塔野夏子

身のまわりのひとところが
なんだか前よりも
がらんとあかるくなった気がするのは
そこに虚無がひとつ
生まれていたためだった
私はいまだその大きさも輪郭もつかめず
いつかつかめる日がくるかどうかさえ
おぼつかないのだが
そのまわりを漂っているのは
おそらく枯れた花束だろう
(あの日あの場所に置いた黄色いガーベラの)

その虚無は私に属してはいるが
私の外にあり
内に沁み入ることはないだろう
かといってそれは消えもしないだろうが
いつしかきっと私はそれを携えていることに
違和感をおぼえなくなり
やがてはその存在を
忘れさえするのだろう

忘れた頃にその虚無に
ひそかな虹がかかるのではないか
などと考えてしまう自分を
いまは小さく笑うしかない



メールマガジン「さがな。」92号掲載





自由詩 虚無をめぐる予測 Copyright 塔野夏子 2007-01-07 18:06:11
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